金沢三文豪 泉鏡花の人物像と代表作について

こんにちは、金沢座 座長のスミタです。

現代でもたくさんの小説家が活躍する中、一時代の人気小説家という地位を確立した “泉鏡花”をご存知でしょうか。石川県金沢市、下新町出身で、1893年から1939年、その人生を終えるまで小説家として活躍されました。

そんな泉鏡花の作品の魅力性はもちろんのこと、その人物像についてもご紹介していきたいと思います。


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泉鏡花の生い立ち

職人の父と、加賀藩の御手役者であった中田万三郎豊喜氏の娘であった母のもとに生まれた泉鏡花。12歳の頃から英語を学び始めるという秀才な一面をもつ彼が小説の世界に興味を持ち始めたのは、16歳のときでした。

尾崎紅葉作品との出会い

初めて触れた小説は尾崎紅葉さんの作品でした。その題名は“二人比丘尼 色懺悔”。尾崎紅葉さんの初書籍化作品とあって、彼の代表作として今日まで受け継がれています。

二人比丘尼 色懺悔はどんな作品?

泉鏡花がこの作品を手に取るきっかけは、下宿先の友人宅でした。あらすじとしては、二人の比丘尼(仏門に入門した女性の修行者。一般的に尼僧と呼ばれるもの。)が出会い、お互いなぜ尼僧となったのか、身の上話を語っていくうちにあるひとつの真実に直面するというものです。

この作品を読んだ泉鏡花は衝撃を受け、ここから小説家としてのスタートを切ることになります。

泉鏡花の代表作「夜行巡査」

泉鏡花の代表作である「夜行巡査」。一体どんな作品だったのでしょうか。

夜行巡査

6章に分けられた短編小説で、立派な体格をしたわかものと、人力車の引手として働く老人との会話から物語は始まっていきます。しかし実はこの物語の主要人物は老人でもわかものでもなく、ある巡査と恋仲にある娘、そしてその娘の伯父なのです。

先に登場した二人の人物の会話は、巡査が決して良い人ではなかったと意味しているように感じます。そんな巡査が、ある事件によって瞬く間に“素晴らしい人”と称されるようになるのです。

この物語の面白いところは、泉鏡花の表現の仕方にあります。巡査の人物像をいかに読者に感じさせるか、そのやり方が実に面白く、巡査が歩いた歩数まで詳しく書き綴られています。「真面目さ」をどう伝えるのか、その表現方法にはなぜか笑みが生まれる作品です。

幻想文学の先駆けとしていくつもの作品を世に送り出してきた泉鏡花。ご紹介したい作品はまだまだありますが、気になる彼の人物像についてもお話していきたいと思います。

泉鏡花の知られざる一面

驚いたのはかなり重症な潔癖症だったということでしょう。火が通っていないものは絶対口にせず、お菓子ですら炙って火を通したのだとか。もちろんお酒も熱燗のみ。それもかなり煮立たせてから飲んでいたそうです。

赤ん坊のミルクを作るための容器などは、煮沸消毒してから使用しなくてはなりませんが、大人であればそこまで気を遣う必要はありませんよね。しかし泉鏡花は、煮沸消毒ができる鉄瓶をいつも持ち歩いていないと気が済まなかったのだとか。

文字にまで及ぶ潔癖症

その徹底的な潔癖症は彼の愛する文字にまで影響をもたらし、腐るという感じが使われている豆腐は豆府と書くようにしていたといいます。もちろん豆腐は豆を腐らせた食品ではなく、腐という字には柔らかいものを指す意味があるため、この漢字が使われるようになりました。

小説に注いだ人生

文字に対してまで潔癖症の一面を持つ泉鏡花ですが、師である尾崎紅葉さんを慕う心はいつまでも変わることはありませんでした。まるで両想いかのような二人の師弟関係は、尾崎紅葉さんが急逝してもなお壊れることはなかったのです。

尾崎紅葉さんの作る作品に対してはもちろんですが、人物に対しても崇拝するほど慕っていたそうです。師匠といえば厳しいイメージがありますが、病に伏せっていても泉鏡花の原稿に目を通し、そのゆくすえを案じない日はなかったといいます。弟子という枠にとらわれない、それ以上に大切で期待していた存在だったのでしょう。

恋よりも師匠

泉鏡花は、伊藤すずさんという元芸妓の方とご結婚されています。しかし、そんな二人の恋は思わぬ人物によって反対されてしまうことに。その人物こそ、泉鏡花が尊敬してやまない尾崎紅葉さんでした。

崇拝するほどの人物から愛する人との恋を反対されてしまった泉鏡花。すずさんの気持ちも複雑なものだったでしょう。お互いがお互いのことをとても愛し、大切に思っていることは分かっていること。女か師匠か、どちらを選ぶのかという決断を迫られたとき、泉鏡花が選択したのは師匠だったのです。

それほど、小説家として尾崎紅葉さんという師匠がいなければという想いが強かったのでしょう。しかし、師匠が急逝してしまった後、晴れて二人は結婚することになります。本当なら、師匠からも認められ、お祝いの言葉をもらい、結婚という形を取りたかったことでしょうが、二人の想いの強さには感動させられますね。

その後二人はこの世を去るまで、お互いの名を刻んだブレスレットを肌身離さずつけていたといいます。

石川県出身のひとりの小説家、泉鏡花についてご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。まずは夜行巡査から、ぜひ手に取り読んでみて下さいね。

>>泉鏡花の作品一覧
以上、石川県出身の有名人シリーズでした!
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