金沢三文豪の一人 室生犀星の経歴と愛される理由とは

座長座長

こんにちは、金沢座 座長のスミタです。

室生犀星は、詩人であり小説家であり、今現在もなお、記念館に訪れる人が絶えない愛された人物です。詩人、小説家として活躍されたことはもちろん、彼が愛される理由にはどんな秘密が隠されているのでしょうか。

今回は、室生犀星について詳しくご紹介していきたいと思います。まず、室生犀星という人物を知るためにも、どんな環境で育ってきたのか、生い立ちからお話していきましょう。

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室生犀星の経歴

室生犀星のご両親は、婚姻関係にありませんでした。加賀藩足軽頭であった男と女中の間に生まれ、そのまま雨宝院住職の内縁関係にあった女性のもとで育てられることになります。

生みの親と育ての親が異なるという経験は、彼の小説家人生に大きな影響をもたらしたといえます。その後は雨宝院住職、室生真乗の養子として正式に引き取られることになりますが、養子になってからもその生活は楽しいものとは言えなかったようです。

“愛人の子”と言われ、幼心に大きな影を落とすことになった生い立ちですが、このことは犀星さんが大人になっても変わらず、彼の心に巣食うことになったのです。

室生犀星を知ることができる作品

俳句や詩、短歌などでもその才能を認められてきた犀星さんですが、今回は室生犀星という一人の人物の人生を見ることができる、2つの作品についてご紹介していきましょう。

幼少期を描いた“幼年時代”

たくさんの気持ちを抱き、苦しんだであろう犀星さんの幼少期を文字で感じ取ることができる作品です。実の母親に対する愛情、傍に入れない孤独感、その母親が父の死により追い出されてしまう苦しみ、この物語にはたくさんの感情が入り乱れています。

子供の頃に感じた感情を、今言葉にあらわせといわれても、実に抽象的で簡単な言葉しか浮かびません。しかし幼年時代で描かれている犀星さんの感情を見ていると、どうしてか思い出すことができるのです。

真っすぐでどこか大げさで、それほどに幼いころは、母というものに対する気持ちが強かったなぁと感じられるのです。そして、詩人ならではの何とも言えない情景の表現方法が見事です。

思春期を描いた“性に目覚める頃”

誰にも訪れる思春期。この頃から異性に興味を持ち始め、自分とは違うものとして認識するようになります。その中には、性に関することも多く含まれているでしょう。そんな若く初々しい青年時代を描いたのがこの作品です。

犀星さんが女性に“性”を感じ始めるきっかけとなったのは、寺の賽銭を盗む女性でした。毎日のように訪れる彼女を見て、なぜか今までとは違う感情の高ぶりを感じたのです。そんな想いを抱きながらも話しかけることができないという点が、実に初々しく思春期特有の照れくささを感じます。

しかし犀星少年は思わぬ行動に出るのです。なんとその女の子の家を突き止め、彼女の雪駄を持ち帰ってしまいます。もちろん、のちにきちんと元の場所に戻すのですが、性衝動に関する行動は、時にとても大胆な行動に出るのだなと、ふと懐かしいような感覚を思い出すことができるでしょう。

>>室生犀星の作品一覧

室生犀星が愛される理由

ご紹介した作品だけでなく、犀星さんの作品を目に映すことで、彼の魅力を感じ取ることはできると思います。小説家として愛されているのはもちろんなのですが、犀星さんをもっと身近に感じられる魅力があることはご存知でしょうか。

まず一つ目は、犀星さんが大の猫好きだったということです。

愛猫はミュン子にジイノ、ツマロ

猫とともに写る写真も多く残されていますが、猫のために熱心にお世話をするその姿に、「かわいい」なんて声も寄せられているほど。なにしろ動物が好きだったようで、特に猫に愛情を注いでいたようです。犬は嫌いといいながらも、なぜか鉄と名付けたブルドックに、土佐犬とブルドックのハーフ犬、ゴリを家に迎え、育てていたのだとか。

このことは、記念館でも犬猫年表と題したものが配られるほどで、犀星さんファンにとってはたまらない内容となっています。

字体がまるで少女のよう?

直筆で書かれた作品を見ると、なんとも可愛らしい丸みのある文字に驚かされます。特に犀星という字が可愛いと評判で、女性人気が高いのもうなずけますね。

甘いものが大好き!

羊羹が大好きという甘党な一面も持つ犀星さん。羊羹を頼むと書かれたハガキも残されているようで、どれだけ羊羹を欲していたのかと思うと、笑みがこぼれてしまいます。猫好き、丸文字、甘党、まるで女の子のような可愛らしい一面をもつ犀星さんですが、他にも犀星さんを好きになってしまいそうな天然なエピソードがあります。

親友に見せた天然な一面とは?

犀星さんの詩に魅せられ、のちに大親友となる萩原朔太郎さんとのエピソードの中に、こんなものがあります。

親友を守るためイスを武器に立ち向かう

あくまでも犀星さんの勘違いだったようなのですが、ある記念会において親友である朔太郎さんが喧嘩を仕掛けられるという事件があったそう。親友が危ないととっさに犀星さんがとった行動は、なんとイスを武器に助けに向かうというものでした。

親友に無礼をはたらく敵を倒そうと、イスで殴ってしまったそうなのですが、当時の2人の会話が実に面白いのです。

朔太郎さんがなぜイスで殴ったのかと問うと、犀星さんは「テーブルは重かったから」と答えたそうなのです。問うた理由とはどこかちぐはぐで天然な答えに、思わずその様子を想像して笑いがこぼれてしまいますね。友人を大切にし、動物を愛した詩人、小説家の室生犀星。今でもたくさんの人に愛される理由がわかりますね。

室生犀星記念館

座長座長

以上、石川県出身の有名人シリーズでした!